本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認した。W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ20~30nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成される。これらメゾスケール構造を有する電析Ni-17at.%W合金試料で引張試験片を作製し、その試験片を1規定の希硫酸エッチング液に140時間浸漬してエッチング処理を行い、レーザー顕微鏡により表面状態を観察することによりナノボイド生成の有無を確認した後、引張試験を実施した。Ni-W電析の表面平滑状態は、銅基板上の下地として行う銅電析の厚さによって影響を受けるため、その標準的な厚さ以外、薄くした場合と厚くした場合についても試料を作製し評価した。希硫酸液によるエッチングにより、電析時の表面平滑性の高いNi-W合金ほど、均一な分布のナノボイドの形成が容易であった。数十から数百nm程度のボイドが生成されたと判断された試料について引張破断強度を測定したところ、ボイド形成による破断強度の低下は認められなかった。以上のことから、Ni-rich領域のメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられ、ナノポーラス構造を有する超軽量合金の開発が可能であると考えられた。
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