環境調和型軽油代替燃料バイオディーゼルとなる脂肪酸エステルは、動植物油の主成分であるトリグリセリドとメタノールのエステル交換反応により合成される。研究代表者は、現行プロセスで用いられる均相塩基触媒の代替として、石ケンを副生せず分離が容易な固体触媒であるOH型陰イオン交換樹脂を提案している。この触媒は、樹脂の活性部位OH基とトリグリセリドの脂肪酸基とのイオン交換による活性消失が併発するため、定期的な再生操作が必要であった。本研究では、活性消失反応を生じない樹脂として、新たに活性部位が反応中間体であるメトキシド型樹脂を作製する。この樹脂を用いて回分エステル交換実験を行い、触媒活性保持に及ぼす置換基の影響や水の影響を検討した。 回分実験はトリオレインとメタノールのモル比をエステル交換の化学量論比である1:3とした反応液にメトキシド型樹脂を加え、50℃、150spmで振盪して行った。24時間後、樹脂を回収してメタノールで洗浄した後、新たな反応液に加えることで繰り返しエステル交換実験を行った。まず、メトキシド型とした樹脂を用いた1回目の回分実験では、速やかに脂肪酸メチルエステル(FAME)が生成した。これより、メトキシド型樹脂が調製できており、メトキシド基の触媒作用によってエステル交換反応が進行していることを確認できた。しかし、メトキシド型樹脂をそのまま繰り返し使用した実験では、ほとんどFAMEが生成せず、触媒活性が消失していることがわかった。反応系に水が存在すると、樹脂のメトキシド基がOH基に変わり、OH型と同様の活性消失反応が生じると考えられる。そこで、脱水メタノールを用いて樹脂や反応液の調製を行ったところ、FAME生成量が増大した。これより水を取り除くことでメトキシド型樹脂の触媒活性が向上したと考えられる。
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