研究概要 |
昨年度,圧力・温度制御型流通式超音波反応装置の設計・開発を行った.申請研究最終年度の今年度は本装置を用いて,ソノケミカル効率の圧力,温度,流量依存性について調べた.なお,ソノケミカル効率は,流通式超音波反応を単段CSTRでの連続操作と仮定し,KI酸化反応速度定数を用いて評価を行った.また,昨年度検討した振動子インピーダンスの周波数依存性の成果に基づいて,操作圧力・温度条件に応じて発振周波数を調整・設定して,実験を行った.流量10^<-3>dm^3・min^<-1>一定での実験結果から,操作圧力および温度上昇とともにソノケミカル効率は減少することがわかった.次に,ゲージ圧力0.3MPa一定の条件のもと,流量を変化させながらソノケミカル効率の温度依存性について検討を行った.同一温度の結果をみると,流量の増加とともにソノケミカル効率が増加し,一定流量を超えるとソノケミカル効率がほぼ一定値をとる挙動が確認できた.これは流量が大きくなることで,安定な気泡を音場から除去することで超音波エネルギーが減衰することを抑制し,安定したキャビテーション気泡の収縮/崩壊サイクルが達成されたためと考えられる.また,同一流量条件で温度の影響について比較したところ,先に示したように流量が低い10^<-3>dm^3・min^<-1>一定のもとでは,温度上昇とともにソノケミカル効率の減少が認められたが,流量が高い条件ではソノケミカル効率が高くなる最適な温度条件が存在することがわかった.以上の成果から,ソノケミカル効率に影響を与える音場内でのキャビテーション核・気泡数のバランス,さらにはキャビテーション気泡の成長/収縮/崩壊状態が,圧力,温度,流量により制御可能であることが示唆された.
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