研究課題
本研究は、優れた分子認識能を持つ核酸リガンドであるアプタマーに注目し、その構造・機能を、磁場を用いて制御する手法を開発することを目的とした。まずその可能性を確認するために、トロンビンを標的分子とした。トロンビンに結合し、その酵素活性を阻害するDNAアプタマーを金ナノ粒子で修飾し、これに交流磁場を印加して金ナノ粒子に誘導加熱を起こすことにより、アプタマーを局所的に加熱し、その構造変化を制御する事を試みた。アプタマーの構造が変化すれば、トロンビンの酵素活性の阻害能も変化するので、結果として酵素活性を機能制御できる。実際に金ナノ粒子修飾トロンビンアプタマーを調製し、これに交流磁場を印加したところ、その構造が変化することが確認できた。そこでトロンビンにこの金ナノ粒子修飾トロンビンアプタマーを添加し、交流磁場を印加したところ、交流磁場の有無により、トロンビンの酵素活性が明確に変わることを確認した。従って予想したとおり、交流磁場印加により、金ナノ粒子アプタマーの構造を変化させ、標的蛋白質の機能を制御できることが示された。本結果は、人体に投与した薬剤を、人体外から非侵襲で交流磁場によりその機能制御が可能であることを示唆しており、副作用の懸念される薬剤を通常は無効化しておき、必要時にのみ効力を発揮させる、あるいは患部にたどり着いたときに効力を発揮するという全く新しい薬剤の開発の途を拓いたといえる。
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Electroanalysis 21(11)
ページ: 1297-1302
ページ: 1303-1308
"Biosensors using Aptameric enzyme subunit ; application of aptamers to allosteric control of enzymes" in "Aptamers in Bioanalysis"(Wiley)
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