研究概要 |
偏性嫌気性菌であるビフィズス菌の単離・培養における通気にはH_2, N_2, CO_2等の嫌気性ガスを用いるが、CO_2を用いる根拠は経験的で科学的な検証はほとんど行われていない。増殖および有用多糖の生産に20%以上のCO_2を要求する偏性嫌気性ビフィズス菌Bifidobacterium longum JBL05についてCO_2代謝メカニズムを解析した。 培養にはプロテアーゼ処理した脱脂乳に25 g/Lの乳糖を加えたミルク分解培地を用い、CO_2または^<13>CO_2を通気した。菌体を酸加水分解して生じたアミノ酸をGC-MSで解析して細胞内代謝産物中の同位体分布を調べたところ^<13>Cはアスパラギン酸に著量、トレオニン、リジン、アルギニンに少量取り込まれていた。しかし、アスパラギン酸、フマル酸、リンゴ酸を添加しても、CO_2 0%の嫌気条件下では増殖しなかった。オキサロ酢酸を添加した場合、増殖が回復したが、オキサロ酢酸は培地に添加した直後から急激に減少していたことから、オキサロ酢酸の分解によって生じたCO2を利用して生育したと考えられた。CO_2はプリン、ピリミジン何れの核酸の生合成にも必須であり、ピリミジン合成にはアスパラギン酸も必要である。ミルク分解培地に含まれる核酸は少ないと考えられるので、アデニン、グアニン、起算沈、シトシン、ウラシル各0.01 g/Lの混合液を添加したところ、本菌はCO_2 0%の嫌気条件下でもCO_2を通気した場合と同様に増殖した。 以上の結果から、本菌はCO_2をアスパラギン酸と核酸の生合成に利用しており、ミルク分解培地にけるCO_2要求性はこれによるものと考えられる。ミルク分解培地に核酸を補うことによってCO_2通気は不要となり、菌体や多糖の生産コストの削減につながるだろう。
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