流体センサの超小型化・高性能化を目指して、MEMS技術を応用した熱線式のナノ流体センサの試作研究をこれまで行ってきたが、超小型化に起因するS/N比の悪化が著しい。そこで、カーボンナノチューブ(CNT)をフィンとして熱線センサに付加する技術の開発とその効果の検証が本研究の目的である。そこで本年度は1本のCNTをフィンとなるようナノ熱線センサへ垂直に接合する研究を行った。実験はすべてナノマニピュレーター(Kleindiek-MM3A-EM)を内蔵した現有の走査型電子顕微鏡(SEM:Hitachi S-2460N)の内部で行った。具体的には、マニピュレータを用いて束になったCNTから直径と長さの適当な1本を選定し、センサへEBID(Electron-Beam-lnduced Deposition)法で接着する。ここで、EBIDとはSEM内のカーボン雰囲気に電子線のエネルギーを作用させてアモルファスカーボンとして基板上に堆積させる技術であり、ナノ材料の接合に応用できる。今回はCNTはナノカーボンテクノロジー社の多層のものを採用した。なお、ナノ熱線の製作法は電子線リソグラフィーとエッチング技術の組み合わせによってすでに本申請者らによって確立されており、幅400nmの白金薄膜細線の懸架された部分のみが基板から断熱されてナノセンサとして働くという原理になる。今年度の研究で明らかになったのは、設置のためのマニピュレータプローブからのCNTの取り外しが非常に困難であることである。そこで急遽、取り外しのための技術開発を行った。具体的にはSEM内に酸素を局所的に導入し、電子線を当ててEBIDのアモルファスカーボンを除去する技術である。詳細はここには記述しないが1ミクロン以下の空間精度で正確なカーボンエッチングが可能となり次年度以降のセンサ構築技術がここに確立したと言える。
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