本研究の目的は、月面機器と月面微粒子の帯電現象と、帯電によって引き起こされる両者の相互作用を数値解析と実験によって調べることである。まずは、様々なプラズマ環境と日照・温度状態の中での帯電電位を数値解析によって明らかにする。その後に、最悪と思われる状況について真空チャンバー内での模擬実験を行い、微粒子が浮上して機器に付着する状態を再現し、月面活動期間中の付着量の見積もりと放電の危険性を評価する。最後に、付着力を測定して振動により微粒子を除去するために必要な力を見積もる。2008年度の成果は以下の通りである。 ・数値解析によって月面と月面機器の帯電状態を調べた。太陽・月・地球の位置関係とプラズマ条件によって8ケースに場合分けを行い、月面上に浮遊した物体(着陸船を模擬)と月面の間の電位差を調べた。月が地球磁気圏尾部にあって、夜側に探査機があるとき、サブストームが発生すると探査機と月面との間で1000Vを越す電位差が発生する可能性のあることがわかった。 ・真空チャンバー中で微粒子帯電浮上の予備試験を行った。チャンバー内に撒いた10から100μmの大きさのガラス微粒子に10keV程度の電子ビームを照射してマイナス数kV程度に帯電させた。微粒子をマイナス数kVに帯電させた後に、微粒子上部に10kVまでの正の高電圧を印加した板をかざしたところ、微粒子が間歇的に浮上していく様子が見られた。真空チャンバー中での浮上を定量的に評価することが今後の課題である。
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