ヒ酸耐性を持たせた鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidansによる代表的ヒ素含有銅鉱石であるenargite(Cu_3AsS_4)のバイオリーチング過程において、実験初期段階に溶液中のヒ酸を取り込むヒ酸第二鉄と思われる二次鉱物が形成することがわかった。ヒ酸耐性を持たない通常菌の実験において溶液中のヒ素濃度の停滞が見られないことから、ヒ酸耐性菌が、液層にヒ酸を誘導する性質があり、ヒ酸第二鉄と思われる二次鉱物の溶解度積に達したところで、二次鉱物が形成したものと考えられる。ヒ素を取り込む二次鉱物の候補として、このほかschwermanniteも考えられるが、走査電子顕微鏡による形態観察から、schwertmannlteに特徴的なピンクッション型の像がみられなかった。pHの条件によっては、schwertmanniteが生成しうる。いずれもこれらは準安定な鉱物相であり、鉱物相へのヒ酸の吸収が頭打ちとなり、ヒ酸が再び溶液相へ放出され、二次鉱物自身は、最終的にjarositeやscorodite等の安定な鉱物相に変質していくと考えられる。このようにヒ酸耐性を持たせた鉄酸化細菌を使った場合、ヒ酸の溶出挙動には、標準株と異なる特徴が見られたが、Cuの溶出挙動にはほとんど影響を及ぼさなかった。この性質を利用し、浸出液中のヒ酸濃度を抑制しながら、Cuの高い浸出速度を保持する浸出条件を見出すことが可能ではないかと考えられる。また、亜ヒ酸耐性を付与した鉄酸化細菌によるリーチング特性にも興味が持たれる。鉄酸化細菌はヒ酸イオンを細胞膜を通して細胞質に取り込み、還元して亜ヒ酸として細胞膜の外に放出する性質が知られており、より毒性の高い亜ヒ酸に対して高い耐性をもっ株では、ヒ素含有銅鉱石のリーチングにおいて有利に働くことが予想される。
|