本研究は、モリブデン酸溶融塩による廃家電基板と廃液晶パネルからのIn金属の回収プロセスの構築を目的として、ITOの成分である酸化インジウム及び酸化スズを種々の溶解条件(温度、溶融塩組成等)で溶解し、溶解度及び溶融塩中での溶解状態を調べ、溶解機構を明らかにするとともに、酸化インジウムを溶解した溶融塩の電解挙動を把握することにより、溶融塩での一括処理により廃家電からIn金属を直接回収する技術の原理的実現性の可否を明らかにする。 種々の濃度の三酸化モリブデン混合モリブデン酸ナトリウム溶融塩(Na_2MoO_4+MoO_3)に酸化インジウムを溶解した(試験方法参照)。その結果、MoO_3濃度が高いほど溶融塩への酸化インジウムの溶解時間が短縮すること、及び酸化インジウムを溶解できることが明らかとなり、原理的には本研究で検討する技術の実現可能性が高いことが確認できた。 酸化インジウムがモリブデン酸溶融塩に溶解する条件としては、Ar雰囲気であることと三酸化モリブデンが共存する場合であった。また、溶解時に発泡現象が観察された。このことから、酸化インジウムのモリブデン酸溶融塩への溶解機構は、まず、溶融塩中で共存するMoO_3もしくはIn_2O_3の脱酸素が生じ、相互に酸素を共有し固溶体を生成することに起因していると推察された。溶解するIn_2O_3に対するMoO_3モル数とIn_2O_3の溶解率の関係を調べた結果、固溶体のIn/MoO_3比は6倍モルであることが推察された。
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