研究概要 |
本研究の目的は、NIMSで開発された液滴を用いた腐食・SCC試験方法を用いて、アコースティック・エミッション(AE)のモニタリングにより、腐食やSCCの進展評価手法の基礎を確立することである。 実験に用いた液滴試験環境は、濃度33%MgCl2液滴(2~5μl)を板厚0.2mmのSUS304及びSUS316L薄板試験片表面に添加し、恒温槽内で温度343~348K、湿度30%に保ち、曲げ応力を各々0MPa(腐食試験)、1000MPa(SCC試験)の2種類の負荷条件で行った。AE計測においては、AEセンサはヘッドアンプ内蔵型高感度200kHz共振型(富士セラミックス製M204A)を用い、これを試験片の両端付近に取り付けた。センサ出力信号はプリアンプで56dB~86dB増幅され、連続波形収録AE解析装置(CWM)によってサンプリング周波数2~10MHz,分解能12bitで最長5日間連続計測を行った。 高感度計測時には試験片とAEセンサーの取付けジグ等をテフロンテープを用いてアイソレーションすることマイクロメカニカルフリクションノイズを除去したAE計測が可能になった。液滴腐食・SCC試験において検出されたAE信号は、従来に比べて2桁以上小さく、高感度で連続的に波形を収録し、収録後に様々な周波数フィルター処理を行うことで、ノイズに埋もれているAE信号を抽出した。 SCC試験結果では、SUS304及びSUS316Lの試験結果において、AEの発生と停留が見られ、最初にAEが連続的に検出された経過時間がほぼ等しく、再現性は高かった。断面SEM観察の結果、破面は粒内割れであり、この粒内割れが進展と停留を繰り返すことでSCCが進展したと考えられた。SUS304の腐食試験では、開口ピットではAEがほとんど検出されなかったのに対し、糸状腐食や皮付きピットでは多くのAEが検出され、断面観察結果より焼鈍双昌とΣ3相の{111}界面に沿って割れが見られた。
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