1.トランスポゾン由来の転写調節領域の比較解析 ホストゲノムに挿入した後、何らかの機能を獲得したため、進化的に保存をされるようになったトランスポゾン配列のうち、特に機能獲得に関係するモチーフを抽出し分子進化学的な解析を行った。最初のデータセットとしてexapted repeats (Lowe et al. 2007)を用いた。オルソログ配列比較および保存配列抽出にはERA(Evolutionary Rigidity Assay)法(Sumiyama et al. 2001; Sagai et al. 2009)を用いた。統計的有意性を確保するためオポッサムと真獣類の間で高度な保存性があるSINE配列について解析を行った。MIRの解析で、オルソログ間比較の結果複数の保存配列が抽出され、いずれもMIRコンセンサス配列と強く関係することが示唆された。また多くのモチーフが転写因子の結合配列である可能性が示唆された。ところがその大部分は祖先配列のそれぞれ異なった部位に由来していた。 2.新しいトランスジェニックマウスによるエンハンサー活性解析法 トランスポゾン由来のモチーフがゲノムの任意の場所に挿入された場合、周囲のモチーフと協調して新しいエンハンサー活性が生じるかを解析するためには、従来のトランスジェニックマウス実験には改良すべき点があった。第一に効率が低いこと、第二にランダムにゲノムに挿入される際に、一挿入座位につきマルチコピー(コンカテマー)として挿入されてしまうことである。この点を克服するため、脊椎動物のDNAトランスポゾンであるTol2システムを応用した能動的遺伝子導入法をトランスジェニックマウス作成に用いた。これまでに、通常の前核注入法によるトランスジェニックマウス作成法よりも有意に高い遺伝子導入効率が得られており、またTol2トランスポゼースの作用により一コピーの挿入が成功していることが確認され、今後の応用に極めて有効な手法であることが期待できる。
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