研究概要 |
原子間力顕微鏡(AFM)本体と液中試料実験容器を設計・製作し,観察に適した探針の作製条件を確立することにより本装置の実用化を実現し,細胞壁試料の適切な調製法を検討する,という20年度計画のうち,AFM本体のハードウエアの設計および製作を完了し,顕微鏡を稼動するためのソフトウエアの開発を行った。具体的には,学内施設により精密加工したステンレス製基盤に各種位置決め装置を配置し,集光レンズ系とレーザー光源,フォトダイオードを取り付け信号検出系を作製した。また,市販のピエゾステージによりXYおよびZ軸方向に移動する試料台を製作し,AFM本体を完成させた。AFMの制御・検出信号処理のための周辺機器として,正弦波発生器,オシロスコープ(新規),安定化電源(新規),デジタル信号処理(DSP)ボード,パソコンを整備し,RMS-DC回路,各種増輻器を製作して接続しAFMを稼動させる環境を整えた。制御ソフトウエアとして予定していたフリーウエアに不具合が生じたため,本DSPボードと互換性のあるC++言語による開発を独自に行い,現在までに探針振幅の波長スペクトル解析とピエゾステージ制御の機能が利用可能となっている。 材料や機器の費用として100万円程度でAFMの自作が可能であることが明らかになり,消耗品(探針)だけでなく本体のコストも市販品よりも格段に安上がりであり,生物学分野へのAFMの応用にとって好ましい実例を示すことが可能となった。また,計画の進捗に若干の遅れがあるが,その原因である全国学会の業務と建物の改修工事の影響はすでに無く今後は計画の遅れを取り戻すとともに,当初の計画全体も完遂できると見込まれる。
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