1.ライデン博物館所蔵シーボルト標本調査 シーボルトが日本から持ち帰った標本は、大半がライデン博物館に所蔵されている。これらの標本は郵送による貸借が認められていないため、直接ライデン博物館において調査・観察する必要がある。そこで2009年3月23日から31日まで、ライデン博物館へおもむき、一部標本の再検査および同定による種名とタイプ標本の地位について確認した。本調査により地方分化の著しいメダカのレクトタイプは南日本集団に属すること、九州産アリアケギバチの模式標本シリーズに関西産ギギが混入していることが示された。 2.文献によるシーボルトの標本採集地の特定 シーボルト標本は採集地が「日本」もしくは、シーボルトが常駐していた「長崎周辺」とされていることが多いが、タイプ産地としてはシーボルトの国内移動範囲である長崎から江戸までが考えられる。シーボルトの日本滞在における動向は多くの文献で研究されているため、シーボルトが日本で魚類標本を収集した可能性のある場所を特定することにより、タイプロカリティが明確になる。そこで文政9年(1826)に行なった「江戸参府紀行」の精査の結果、ゲンゴロウブナ・ニゴロブナなどの琵琶湖特産種の入手は3月25日(往路)または5月31日(復路)であることが示唆された。
|