1.海外博物館での標本調査 平成20年度は、直接ライデン博物館へ赴き、一部標本の再検査および同定による種名とタイプ標本の地位について確認した。しかし、分類学的な課題は依然残されており、いくつかの種については、海外の著名な博物館において絶滅危惧種など優先度の高い種について調査を行なう必要がある。そこで平成22年3月21日から26日まで米国スミソニアン博物館へ赴き、タイプ標本と照合を行なった結果、タナゴ類やゼゼラ類など小型コイ科魚類の学名の整理(シノニム関係)ができた。このことにより、保全対象種の実態が明確となり、具体的な保全目標の設定が可能となった。 2.シーボルト標本からDNA抽出の試み 現在のシーボルトコレクションはアルコールにより固定・保存されているため、DNAによる判別が技術的には可能であると考えられる。DNA情報が得られれば、系統地理学的な情報と比較することにより、より詳細なタイプ産地の確認が可能になる。20年度ライデン博物館における標本調査では、鱗や粘膜を持ち帰りが許可された。今年度DNA増幅を試みたところ、PCR法により増幅されなかった。シーボルトが標本を出島からオランダに持ち帰る際、液浸標本はアラキ酒(ヤシの焼酎)につけられた。そのアルコール濃度は20%であることをつきとめ、結果としてDNA情報は保存されなかったと考察する。
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