真核生物の染色体DNA複製研究の大きな障害になっているのは、酵母を始め真核生物では染色体DNA複製の試験管内再構成系が確立されていないために、生化学的解析が充分に行えないことである。遺伝学的研究から、真核生物の染色体DNA複製反応は、複製開始点に順番に種々の因子が結合して開始されることが示唆されている。複製開始点に常に結合しているORC(Origin Recognition Complex)にまずCdc6pが結合し、次にCdtlpとMCMが結合し、pre-RCと呼ばれる複製前複合体がG1期に形成されることがその第一段階と考えられている。最近我々は、真核生物の染色体DNA複製の最初の段階であり、かつ律速段階と考えられている、origin DNA(複製開始点を含むDNA)上でのORCとCdc6pによる複合体形成の試験管内再構成に、酵母を使って世界で初めて成功した(Mizushima et al. Genes&Dev. 2000)。また最近、この複合体にさらにCdtlpとMCMを結合させることにより、pre-RCを試験管内で再構成することに成功した。今後は、このシステムを土台に真核生物の染色体DNA複製の試験管内再構成系を確立することである。具体的には、pre-RCがサイクリン依存性キナーゼにより活性化されると共に、Cdc45pなどが結合しpre-ICが形成されるので、この複合体にサイクリン-サイクリン依存性キナーゼ複合体やCdc45pなどを作用させ、pre-ICを試験管内で再構成する。
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