分裂酵母において、交差耐性を観察する系を築き、遺伝学的変異体のスクリーニングによって、cpc2遺伝子が交差耐性誘導に重要であることを明らかにした。Cpc2蛋白質がリボソームと結合することを見いだし、交差耐性が翻訳開始を制御することによってもたらされる可能性を示した。mRNAよりの翻訳開始制御に関わる分子として、eIF2aおよびそのキナーゼが知られている。種々のストレスにより、eIF2aキナーゼは活性化され、eIF2aをリン酸化して活性阻害し、多くの遺伝子転写物からの翻訳を阻害する。Cpc2とeIF2aリン酸化の関係を検討したところ、一部、その作用に重複が見られたことから、これらは、協調してストレスに対して翻訳効率の修飾を行う可能性が考えられた。今後、Cpc2がどのように、翻訳開始制御を行っているのか、どのようにして低容量ストレスが細胞によって関知され、Cpc2に信号が伝達されるのか、高等真核生物においても同様な現象が観察されるのかを明らかにしたい。 また、cpc2を同定した遺伝学的スクリーニングで得られた変異体のうち、cpc2ではないことが明らかなものについて、その責任遺伝子の同定を行っている。この変異とcpc2変異二重変異は、ストレス反応が相加的に低下したので、異なる経路で機能することが予想された。これらの研究によって、低容量ストレスに対する生体の反応機構が明らかにされることが期待される。
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