蛋白質は、細胞の中においてリボソームにより合成される。この過程は、mRNAに転写された遺伝子情報が、アミノ酸配列に翻訳されるステップであるだけでなく、構造を持たないポリペプチド鎖が特定の形に折り畳む過程でもある。しかし、この過程における蛋白質の構造変化は十分い研究されていない。本研究は、一分子観察法を用いることで、合成途中の蛋白質の性質を調べ、真の折り畳み過程を解明することを目的とする。 本年度は、北陸先端大の芳坂博士が開発された蛋白質のN末端残基を蛍光ラベル化する技術を用いることで、蛋白質のN末端に蛍光色素を修飾したマルトース結合蛋白質を合成し、得られた試料の一分子レベルによるデータ測定を行った。 この蛋白質は、マルトース結合により構造変化を起こすことが知られており、実際にバルクレベルで蛍光色素の強度変化が観察できることを確かめられている。得られたデータは、試料の構造変化ダイナミクスを示しており、今後の解析が期待される。 本年度の研究により、計画している手法を用いることで、一分子レベルでの蛋白質の構造変化を比較的容易に追跡できることを確認した。今後、蛋白質合成系における一分子観察へと研究を展開する予定である。
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