研究概要 |
動物細胞において様々な生理作用を持つイノシトール高次リン酸化合物の植物における機能を明らかにするため、代謝経路やそれに関わる酵素遺伝子群を明らかにすること、生理現象のうち特に胚発生における役割を明らかにすることを目的として実験を計画した。 1.KCS1ホモログの解析 KCS1のイノシトール結合領域のアミノ酸配列に相同性の高い配列を持つイネ遺伝子としては、OsIPK2やイノシトール三リン酸キナーゼの一種OsITPKが存在する。これらの遺伝子の発現解析から、胚形成が行われる登熟種子での発現が特異的に高い遺伝子としてOsIPK-4とOsITPK-6遺伝子が候補として挙げられた。これらの遺伝子が酵母のKCS1遺伝子の働きを相補できるかを明らかにするため、酵母のKcs1変異体でイネの遺伝子を発現させたところ、KCS1遺伝子の働きを相補するという証拠は得られなかった。 2.VIP1ホモログの解析 酵母のもう一つのイノシトールピロリン酸合成酵素遺伝子VIP1のイネ相同遺伝子OsVIP1-1とOsVIP1-2の発現パターンを調べたところ、OsVIP1-1が種子胚で高い発現をすることがわかった。そこで、OsVIP1-1の機能を明らかにする目的で、OsVIP1-1の発現を植物体全体で,または種子胚で抑制した形質転換イネを作出することにした。それぞれ、アクチンプロモーターとオレオシンプロモーターにアンチセンスの向きに連結した遺伝子を持つベクターを構築した。
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