研究課題
作物の生産現場では、化学農薬の殺菌剤に替わる新たな病害防除法の確立が強く求められているが、その一つとして植物の抵抗性を誘導して病害を防除するという非殺菌性の抵抗性誘導剤(プラントアクティベーター)に関心が集まっている。植物病原菌の多くは菌類で、このような菌類の感染では、菌類の成分を植物がシグナル分子(エリシター)として認識し抵抗性を発現するという仕組みが明らかとなっている。一方、食用きのこも菌類であり、きのこ収穫後の菌糸体が充満した廃菌床は豊富なエリシター源となる可能性が高い。そこで、鳥取県の代表的食用きのことして栽培が推奨されているハタケシメジの廃菌床を用いて、キュウリ炭疽病に対する防除効果を調べた。廃菌床に水を加えて磨砕した後、オートクレープ処理により水抽出液を得た。ポット植キュウリの第1葉に水抽出液を数秒間浸漬処理し、1週間後に炭疽病菌を上位葉に接種すると、いずれの葉においても病斑形成が顕著に抑制され、全身的な防除効果がみられた。次に、オートクレープ処理した廃菌床を栽培土と1:2(v/v)に混合し、ポットに入れてキュウリを栽培すると、水抽出液処理の場合と同様、炭疽病に対する全身的な防除効果を示した。そこで、キュウリにおける全身獲得抵抗性(SAR)関連遺伝子の発現を調べると、水抽出液処理葉では炭疽病菌接種後1日以内にSAR関連遺伝子の急激な発現がみられ、水抽出液処理による炭疽病の防除効果は、キュウリにおけるSARの誘導によることが示唆された。今後、廃菌床水抽出液のプラントアクティベーターとしての効果を種々の病害で検討する予定である。
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