(1) 休眠ホルモンがカイコ体内で前胸腺刺激活性を持つかどうかを明らかにするためには、擬似的な蛹休眠状態、つまり除脳永続蛹を作製し、これに休眠ホルモンを注射し、成虫発育が促進されるかどうかを調査することである。このように本来の前胸腺刺激ホルモンであるPTTH単離の際に使用されたバイオアッセイを用いることである。 (2) PTTHは蛹化直後に放出されるので、この放出以前に除脳を行わねばならない。蛹化からPTTH放出までの時間が一番長いカイコ品種としてC115(♀)×J122(♂)のF1カイコが知られている。 (3) 今年度は、C115とJ122の卵を農業生物資源研究所から譲渡いただき、数世代飼育し、実験に耐え得る性質と数量を確保した。 (4) 蛹化直後に除脳することは出血なども伴い、実験に耐え得る頭数を確保するのはなかなか困難であるので、前蛹期の脳-前胸部間の結紮による除脳永続蛹作製の可能性を検討した。 (5) 胚から幼虫体完成まで、および孵化過程で休眠ホルモンが前胸腺に作用し、胚脱皮や孵化過程に影響を与える可能性を検討するために、休眠ホルモン受容体の発現をknockdownさせるべく、休眠ホルモン受容体に対する二本鎖RNAを合成し、初期胚に注射し、発育への影響を検討した。 (6) 同時に、休眠ホルモン受容体に対するmorpholino-antisense oligoを作製し、初期胚に注射し、受容体タンパク質発現のknockdownを介した発育への影響を検討した。 (7) 休眠ホルモン受容体発現のknockdownでは、胚-幼虫までに発育遅延の影響が認められた。前胸腺への影響を介したものかどうかは今後の課題である。
|