研究課題
本研究は、マツノマダラカミキリ及び青変菌が生合成する抗菌性生体分子の特性を解析することによって、マツノマダラカミキリ、マツノザイセンチュウ及び青変菌の三種における密接な生物間相互作用の樹立に、抗菌性生体分子が機能的に担う分子的基盤を明らかにすることを目的とする。本年度は、マツノマダラカミキリから抗菌ペプチドであるディフェンシンcDNA及び遺伝子を単離し、構造解析と発現解析を行い、その特性を明らかにした。マツノマダラカミキリから全RNAを抽出し、非翻訳領域並びに翻訳領域を含むディフェンシンcDNAを単離した。DNAシークエンス分析により構造解析を行い、ディフェンシンcDNAの非翻訳領域を含めたヌクレオチド配列及び翻訳領域のアミノ酸配列を明らかにした。翻訳領域は分泌のためのシグナル配列、プロ領域及びディフェンシン領域から構成された。PCR法による簡便的な遺伝子発現について解析を試みた結果、ディフェンシン遺伝子が幼虫、蛹及び成虫で発現していた。この遺伝子発現は、既知の抗菌ペプチドで解明されている細菌感染に応答する一過性の発現と異なり、刺激のない状態で常時発現していることが示唆された。更に、cDNAから設計したプライマーを用いてゲノムDNAからPCR法によりディフェンシン遺伝子をクローニングし、DNAシークエンス分析により部分的な構造解析を行った。そのヌクレオチド配列の分析結果から、ディフェンシンの翻訳領域にイントロンの介在するタイプとイントロンを含まないタイプの二種類の遺伝子がマツノマダラカミキリのゲノムに存在することを明らかにした。
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森林総合研究所研究報告 9
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