研究概要 |
本研究は,インドール環4位への窒素原子導入反応を触媒する酵素を,本研究代表者らが保有する特異な放線菌(Streptomyces blastmyceticum NA34-17)の生合成遺伝子を用いて大量に調製するとともに,その触媒機構を明らかにすることを目的としている.S. blastmyceticumが生産するteleocidinは,強力な発がんプロモーターであり,indolactam-V (IL-V)を基本骨格としている.IL-VはN-methyl-L-valyl-L-tryptophanolがインドール環4位に直接閉環した構造を有しているが,この閉環反応は有機合成化学的には極めて困難である.IL-V前駆体は,非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)によって合成されることが知られている.そこで,本菌株がもつNRPSのN-メチル化ドメインの保存領域を基にプライマーを設計し,クローニングを行なった.その結果,teleocidin生合成遺伝子群は,NRPSをコードするtcnA,IL-Vの7位へのモノテルペン側鎖導入酵素をコードするtcnD,機能未同定のMbtHをコードするtcnB,さらにcytochrome P450 oxidaseをコードするtcnCからなることが判明した.これまでに本研究代表者らによって明らかにされたIL-Vの生合成経路からTcnBおよびTcnCがIL-Vへの閉環反応を触媒していることが予想された.そこでまず,大腸菌においてtcnB, tcnCを大量発現させることを試みた.TcnB及びTcnCと思われるタンパク質の発現に成功したが,N-methyl-L-valyl-L-tryptophanolをIL-Vに閉環させる条件を確立することはできなかった.今後,放線菌での発現ならびにco-factorを検討する必要がある.
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