本研究はペプチド系抗生物質バクテリオシンの一種であるランチビオティックの生合成遺伝子にターゲットを絞り、ゲノム情報から比較的高い割合で生合成遺伝子を保持していると予想されるバシラス科の細菌が、どの程度当該生合成遺伝子群を保持しているかを網羅的に解析し、ランチビオティック様ペプチド生合成遺伝子を保持する微生物のライブラリを構築することを目的とした。土壌およびサイレージを分離源として、微生物が生産する代謝物質のMALDI-TOF-MS分析とその測定データの主成分分析(PCA)による微生物の化学的分類を試みた。代謝物質のプロファイリングのみによる微生物の分類は、一定の培養条件で培養した代謝産物を比較する必要があるが、決まった培養条件では、1種類のサンプルから単離される微生物は3〜5種程度で、当初予想していたよりも多様な微生物種を得ることが困難であった。また、生育ステージによる代謝産物の変化の影響が大きく、明確なグループ分けは困難であった。こうしたことから16s rRNA配列による系統樹解析結果と代謝物質のプロファイリングを対応させ、Partial Least Square(PLS)法によるグループ分けと分類モデルの構築が必要であると考えられた。今後、PLS法を利用した分類モデルの構築による化学分類法を検討するとともに、より多様な微生物分離源からのバシラス科細菌の分離を行い、既に設計済みのランチビオティック環化酵素遺伝子増幅用プライマーセットを用いて、ランチビオティック環化酵素遺伝子の検出およびクローニングを進めていく。
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