カーボンナノ粒子には、球状のフラーレン、管状のカーボンナノチューブがあるが、本年度はフラーレンC60が腸管上皮細胞機能に及ぼす影響をin vitroモデル系で解析した。 (1)フラーレンは疎水性が高いために溶解度が極めて低く、細胞に添加するにあたって、その溶解条件を検討する必要があった。細胞実験にしばしば用いるエタノールやジメチルスルフォキシドに対しては溶解性が低く、トルエンのような有機溶媒によって溶解させることが可能であった。これを培地で希釈したものを細胞に加えた。腸管上皮細胞としてはヒト由来Caco-2を用い、単層培養した本細胞に上記のように希釈したフラーレン溶液を添加した。培地で500倍以上に希釈した溶液(フラーレン濃度として500nM以下)は細胞に対して毒性を示さないことがLDH試験法などで確認された (2)Caco-2細胞のサイトカイン産生に及ぼすフラーレンの影響をELISA法で調べた。500nM以下のフラーレンではIL-8産生量には変化は認められなかった。また、過酸化水素や炎症性サイトカイン(TNF-α)で刺激した際に誘導されるIL-8産生についてもフラーレンの影響は認められなかった。しかし、過酸化水素刺激で誘導されるIL-18分泌に関してはフラーレンで上昇する傾向が見出された。フラーレン溶液(分散液)の調製の難しさから、再現よくフラーレンを細胞に作用させることが困難であり、予定した各種パラメーターを測定するに至らなかったので、次年度はフラーレンおよびカーボンナノチューブの添加法を再検討する必要がある。
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