研究概要 |
大まかな大きさや附属肢の形状の違いなどから、孵化幼生から亜成体に至るまで、少なくとも8段階のステージが認められた。ただし飼育による継続観察が出来ていないため、後胚発生の全ステージの確定には至らなかった。 成体雄は受精卵塊をセメント物質により一つの輪状にまとめ、その輪の中に担卵肢を差し込む事で、担卵していた。雄が抱える卵塊数は1つから最大7つを数えたが、他のウミグモ類におけるこれまでの観察から、一回の生殖行動により一つの卵塊が産生されるものと考えられ、雄は生涯中に複数回、生殖活動を行えるものと推測された。 雌卵巣内の卵母細胞の発達段階は、卵黄形成期卵母細胞・前卵黄形成期卵母細胞・卵原細胞を含むより若い卵細胞の少なくとも三段階が区別でき、生涯中に複数回の産卵が可能である事が示唆された。雌一個体の卵黄形成期卵母細胞数は、約2,600個と計測され、以前計測された一卵塊中の受精卵数(約1,000〜3,000個)とほぼ一致した事から、一回の生殖行動で、発達段階が揃った卵(卵黄形成期卵母細胞)が一気に産卵されるものと考えられた。 多くのウミグモでは、卵巣中で卵母細胞の成長、すなわち卵形成の進行が見られるのは、各歩脚の少数の節内に限定されるのに対し、カイヤドリウミグモでは胴部も含めた卵巣全域において卵形成の進行が認められ、複数回の生殖行動及び産卵能力と併せて、この種における高い生産性が示された。 ビデオカメラによるマクロ撮影、あるいは実体顕微鏡に取り付けての撮影により、生殖行動の直接観察を試みたが、今のところ生殖行動の撮影には成功していない。また形態的に他種との識別が困難な孵化幼生の確実な検出を目指して、カイヤドリウミグモモノクロナール抗体の作成を計画しており、当該年度中にその前段階としてのポリクロナール抗体の作成を開始した。
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