研究概要 |
諸外国からわが国に遵入された外来魚は近年,各地で繁殖して大きな問題を起こしている。本研究は,知見が極めて少ないそれら外来魚の寄生虫相を調べるとともに,外来魚に特異的に寄生する寄生虫の増殖メカニズムを解明して,それら寄生虫の個体群維持機構を明らかにするものである。本年度は,ブルーギルに寄生するカイアシ類の1種,ヤマトニセエラジラミの個体数の季節変動と寄生部位に関する研究を行うとともに,テラピアカムルナーの寄生虫について形態分類学的な研究を行った。得られた知見は以下のとおり。 (1)広島県で採集したブルーギルにおいて,ヤマトニセエラジラミの個体数は冬季と春季には低いが.夏季に著しく増加して盛夏に最大に達した後,秋季に低下することが明らかになった。また,本寄生虫は鰭に特異的に寄生し,特に背鰭尻鰭に多く見られた。両鰭内では軟条部の鰭膜に多く分布し,寄生密度が高まると他部位で個体数か増加する傾向がみられた。これらにより,本寄生虫は宿主上でランダムに寄生しているのではなく,選択的に寄生部位を利用していることが示唆された。 (2)テラピアの鰓に寄生する寄生虫は,その形態学的特徴から,単生類のCichlidogyrus Scleosusに同定された。本寄生虫はわが国から初記録である。 (3)カムルチーの鰓に見られた寄生虫は,その形態学的特徴から,カイアシ類のLamproglena scleosusに同定された。日本から本種に形態が酷似する種が報告されていたが,両者は同一種であることが明らかになった。
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