研究概要 |
諸外国からわが国に導入された外来魚が近年,各地で繁殖して大きな問題を起こしている。本研究は,知見が極めて限られている外来魚の寄生虫相を調べるとともに,外来魚に特異的に寄生する寄生虫の増殖メカニズムを解明して,それら寄生虫の個体群維持機構を明らかにするものである。本年度は,オオクチバスに寄生する単生類相を明らかにするとともに,テラピアやフナ類に寄生するヒル類の分類・生態学的研究と外来魚に寄生するチョウ属エラオ類の研究を行った。得られた結果は以下のとおりである。 (1) 広島県で採集したオオクチバスの鰓には北米起源の単生類が寄生し,Onchocleidus属2種,Clavunculus属1種,Syncleithrium属1種の合計4種が認められた。これら単生類の個体数は,初夏に最高値に達したが,真夏には減少した。このため,日本の真夏の高水温はこれら寄生虫の繁殖に好適でないと推測された。 (2) 沖縄産カワスズメ(テラピア類)からヒル類を採集し,ミナミウオビルZeylanicobdella arugamenisisに同定した。本種は日本から初記録である。ミナミウオビルは宿主特異性が低いため,他魚種にも寄生して個体群を維持していると考えられた。 (3) 京都府木津川産ギンブナに寄生するヒル類を得て,マミズヒダビルLimnotrachelobdella sinensisに同定した。このヒルは外来寄生虫である可能性が高く,淀川水系において大阪府から京都府に侵入して,その分布域を拡大していることが示唆された。 (4) 外来魚のブラウントラウトとコクレンにエラオ類のチョウモドキArgulus coregoniとチョウArgulus japonicusがそれそれ寄生することが明らかになった。
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