本研究は、ポリ塩化ビニル(PVC)等難分解物質を海洋細菌を用いて分解し、有用物質を生産するシステムの基盤構築を目的としている。昨年度モノブロモ酢酸(MBA)の微生物に対する増殖阻害作用を利用した集積培養(MBA法)を試み、鹿児島湾若尊カルデラの海底コア試料から、構成的に高い脱ハロゲン活性を発現するBacillus I37c株の分離に成功した。そこで本年度は、本スクリーニング法を一部改変した寒天培地法(以下改変MBA法)により、新規の脱ハロゲン活性保有菌の探索を試みた。【方法】2009年5月23目鹿児島県指宿市山川沿岸域から採取した海水を用いた。(1)改変MBA法によるスクリーニング:1.5%寒天培地(MJ人工海水+酵母エキス+トリプトン)に110mM MBA+2mM HEPES Bufferと試料を塗沫し、好気37℃で一晩静置培養しコロニーを得た。(2)脱ハロンゲン化活性の測定:生じたコロニーから分離株を得て好気培養した。細胞を超音波破砕して粗抽出液を調製後、モノクロロ酢酸(MCA)を基質として37℃で反応させ、脱離するCl濃度を水銀(II)チアシオン酸による発色量を測定した。1分間の脱離Cl量(μmol)を1Unit(U)と定め、粗抽出液中の活性を求めた。 【結果と考察】改変MBA法により多くのコロニーが得られた。分離株をMBA添加区と非添加区で培養した結果、2株(Y2-1、Y2-11)において、タンパク質1mg当たり各々0.14Uと0.05Uの活性が認められた。改変MBA法でHAD保有株を比較的効率よく探索可能であるが、さらに集積培養を併用してより高い脱ハロゲン活性を有する菌株と新規な脱ハロゲン酵素保有菌の取得が可能になると期待される。
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