研究概要 |
トキソプラズマ原虫が侵入した白血球表面においてビアルロン酸レセプター分子であるCD44,ICAM-1の発現が急速に増強されることを確認した。いっぽうでインテグリンなどの分子については発現増強がみらなかった。またヒアルロン酸コートした固層表面に感染は血球が選択的に吸着することも確認できた。これらの結果から母体血流中の感染白血球は胎盤組織の細胞外マトリクスに選択的に吸着することが予想される。妊娠マウス(母体細胞はGFPを発現し、胎児細胞は発現しないモデルマウス)に赤色蛍光蛋白を発現するトキソプラズマ原虫を感染させて胎盤を観察したところ赤色原虫に感染した緑色の母体細胞が胎盤の胎児側組織に多数接着している像が確認された。感染母体細胞の吸着象は胎盤の数箇所に局所的にみられた。このことは、トロフォブラスト表面に播種的に吸着するのではなく、トロフォブラストが物理的に剥がれ落ちて細胞外マトリクスが露出した部部に集中的に感染細胞が集まる可能性を示唆している。 さらに吸着した緑色蛍光陽性母体細胞の挙動を見るため臍帯の血管や胎児肺組織を検索したところ、緑色蛍光を発する細胞が観察された。このことからトキンプラズマ感染マウスにおいて母体細胞の一部が血液胎盤関門を通過することが明らかになった。さらにその一部は赤色蛍光を発するトキソプラズマ原虫に感染していた。このことは血液胎盤関門を通過する母体細胞が虫体を胎児までおくりとどけるという新たな母子感染ルートの存在を示している。
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