研究概要 |
根表面での養水分吸収や根から滲出する有機酸などの影響により、根の極く近傍の土壌(根圏)は非根圏と比べて物質の移動や代謝が盛んである。しかし、根圏は極めて狭い領域であるため、その解析は困難であった。本研究では根圏の微小領域における土壌溶液の解析を目的とし、根圏を観察しながら土壌溶液を採取して分析を行なう基本的なシステムの構築を行なった。 観察システムは、当初予定したファイバースコープでは土壌への挿入が困難であったため、ストレートタイプの工業業硬性鏡(ボアスコープ)とし、外径が1.7mm、長さが18cmのタイプを選定した。また、視野方向としては直視(0°)や側視(90°)よりも斜視(15°)が観察に適していると判断した。 土壌溶液採取部は、当初予定した樹脂製ポーラスは直径が2.5mmタイプであったが、デッドボリュームが大きいため、直径が1.1mmで長さが8mmのタイプを選定した。このタイプにより、畑状態で約200μLの土壌溶液が採取できた。 土壌溶液分析にっいては、まず微小量を分析するために高感度なICP-MSを用いて希釈後に測定できるように検討し、分析に使用できる溶液が50μLとして20倍に希釈して1mLの試料を用いれば、流量が0.1ml/minに設定することで充分に分析できることを確認した。通常の土壌溶液中の金属濃度からすれば、K,Ca,Mgはじめ、Fe,Mn,Cu,Znなどについて分析できることを確認した。 pH測定にっいては、当初予定したフルオレセインなどの蛍光試薬による測定では、試料溶液が少ないために測定が困難な場合があり、さらに改良をする必要があることがわかった。現在、蛍光試薬による測定の改良と半導体型のpHセンサーの両面から検討を行なっている。 以上のように、根圏をボアスコープで観察しながら土壌溶液を採取・分析する基本的なシステムを構築した。
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