研究概要 |
アフリカツメガエル卵子を用いた無細胞抽出系では、抽出液中のリプログラミング因子を体細胞内に取り込ませるために、細胞膜透過にストレプトリシンOを用いて行われてきた。しかし、この製剤は安定性が悪く、実験ごとにデータがばらつきがある難点があり、細胞膜透過を安定的に誘導できる薬剤が求められていた。そこで、本実験では、界面活性剤であるジギトニンを用いて、ウシ、マウス、ブタの体細胞の細胞膜透過を行い、アフリカツメガエル卵子の卵抽出液中のタンパク質成分の哺乳動物体細胞核への移行について検討した。さらに、膜透過後にCaイオン存在下での膜修復を試み、修復後の細胞を体外培養を行って、培養細胞内での未分化マーカーなどの発現を指標に、卵子抽出液のリプログラミング誘導活性について検討した。その結果、体細胞に対するジギトニン処理によって、可逆的に体細胞の膜修復が可能であることが明らかとなった。また、哺乳動物細胞中には存在しないヒストンH4やラミンLIIIが細胞核内に取り込まれることを明らかにし、本処理によって、カエル卵抽出液中に特異的に存在する核タンパク質が哺乳動物閣内に移行できることを明らかにした。さらに、抽出液処理後の細胞を膜修復後に体外で培養することによって、多くの未分化細胞様のコロニーが出現し、OCT-4,SOX2やNANOGなどの未分化細胞に特異的に発現するマーカー遺伝子の発現上昇がみられたことから、ジギトニン処理によって膜透過した哺乳動物の体細胞は、カエルの卵抽出液で処理することによってリプログラミングを誘導できることが示唆された。
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