抗菌性ペプチド・タキプレシンIの毒性を軽減するため、N末端にポリエチレングリコール(PEG)修飾を行うが、タキプレシンIは1位にリシンを含むため、リシン側鎖にもPEG修飾が起こる可能性がある。そこで、1位のリシンをアルギニンに置換したKIR-タキプレシンIをFmoc固相法で合成し、大腸菌由来リポポリサッカライドへの結合性をトリプトファンの蛍光変化を指標として、タキプレシンIと比較した。結合定数はいずれも10^7M^<-1>のオーダーであったことから、K1R-タキプレシンIをベースとし、PEG修飾を行うこととした。K1R-タキプレシンIを平均分子量2万のPEG化試薬とジメチルホルムアミド中で反応させ、逆相HPLCとイオン交換クロマトグラフィーで精製した。平均分子量1万のPEG化試薬を用いた場合には、精製が困難であったため、合成法を再検討中である。 一方、抗菌性ペプチドがほ乳類細胞に及ぼす毒性の詳細な機構を明らかにするため、最も代表的な抗菌性ペプチドであるマガイニン2とCHO細胞との相互作用を調べた。マガイニン2は巨大な孔を細胞膜に形成し、膜脂質のフリップフロップを引き起こして、細胞毒性を発現することが分かった。さらに、従来から溶血性を持たないとされたマガイニンに溶血性があることも見いだした。また、マガイニン2の種々の誘導体を合成し、生物活性を評価したところ、抗菌力を保持したまま細胞毒性を低減させるには、正電荷を増やすと同時にプロリンを導入することが有効であることを明らかにした。
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