抗菌性ペプチド・タキプレシンIの1位のリシンをアルギニンに置換したK1R-タキプレシンIをFmoc固相法で合成し、DMF溶液中で3当量のポリエチレングリコール(PEG)化試薬と50℃、10時間反応させ、平均分子量1万と、2万のPEGをN末端に付加した。 まず、大腸菌由来リポポリサッカライド(LPS)への結合性をトリプトファンの蛍光変化を指標として、K1R-タキプレシンIと比較した。結合定数はK1R-タキプレシンIが10^7M^-1ののオーダーであったのに対し、PEG修飾体では1/10に低下した。 次に、RAW264.7マクロファージに対する細胞毒性をWST-1法で調べたところ、K1R-タキプレシンIが5μM以上の濃度で強い細胞毒性を示したのに対し、PEG修飾体は、PEG分子量依存的に細胞毒性が低減した。平均分子量2万の修飾体では、100μMでもほとんど毒性を示さなかった。 最後に、エンドトキシンショックの治療効果の指標となるLPS刺激による炎症性サイトカイン・TNFαの産生に及ぼすペプチドの効果をRAW264.7マクロファージを用いて調べた。K1R-タキプレシンIは5μMの濃度で、ほぼ完全にTNFα産生を抑制したが、PEG修飾体では、PEG分子量依存的に効果が減少し、平均分子量2万の修飾体では、ほとんどTNFα産生抑制作用を示さなかった。 以上から、タキプレシンIのPEG修飾によって治療係数はあまり改善されないことが明らかになった。
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