研究概要 |
1.小胞体関連分解(ER-associated degradation: ERAD)は,小胞体の変性タンパク質を小胞体から細胞質に排出し,ユビキチン-プロテアソーム系により分解する小胞体ストレスに対する防御機構である.ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1は,アルツハイマー病(AD)の原因タンパク質β-amyloid(Aβ)の前駆体タンパク質(amyloid precursor protein: APP)をユビキチン化し,分解促進することで,Aβの産生量を低下させる.今回私たちは,HRD1の発現を誘導する薬物として,プロテインキナーゼC (PKC)を活性化するPMAを見出した.今後の展望として,PMAによるHRD1誘導機構を明らかにし,PKCを介したHRD1誘導薬が,ADの治療薬となりうる可能性を検討したい. 2.4-フェニル酪酸(4-phenylbutylic acid, 4-PBA)はフェニル基と四つの炭素鎖からなるカルボン酸であり,変性タンパク質凝集抑制を有するケミカルシャペロンとして作用する.私たちは4-PBAの誘導体を24種類合成し,家族性パーキンソン病関連タンパク質Pael受容体による神経細胞死に対する効果について検討した.その結果,4-PBAより神経細胞死抑制作用の強い化合物を見出した.今後は,神経細胞死抑制作用との構造活性相関を明らかにし,詳細な神経細胞死抑制機構について検討したい.
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