研究代表者は、酸化ストレス惹起物質であるパラコートの毒性発現に影響を与える酵母遺伝子を網羅的にスクリーニングし、エンドソーム上でのMVB(multivesicular body)ソーティングシステムに関わる5つの蛋白質がパラコートに対して防御的に作用することを見出した。しかし、ここで用いたスクリーニングは簡易的なものであり、パラコート毒性に関わる全ての因子が同定されているとは限らない。そこでまず、MVBソーティングシステムにおいて基質認識という最も重要な役割を果たす蛋白質であるVps27を欠損した酵母を作成し、パラコート処理により酸化ストレスを負荷した際の生存率を対照酵母と比較した。その結果、Vps27を欠損させた酵母もパラコートに対して高い感受性を示すことが判明した。MVBソーティングシステムに関わる蛋白質はこれまでに13種同定されているので、次に、これら13種全ての蛋白質をコードする遺伝子を1つずつ欠損させた酵母を作成してパラコート処理したところ、これら13種のうちどの蛋白質が欠けても、酵母はパラコートに対して高い感受性を示すことが明らかとなった。また、MVBソーティングシステムを構成する各因子のエンドソームからの解離に関与するVps4のドミナントネガティブ変異体(MVBソーティングシステムの機能を低下させる)の発現もパラコートに対して高感受性を示した。一方、パラコート以外の酸化ストレス惹起物質として過酸化水素およびジアミドの毒性とMVBソーティングシステムとの関係を検討したところ、両物質に対してもパラコートの場合と同様に各欠損酵母が高感受性を示すことが判明した。以上の結果は、MVBソーティングシステムが酸化ストレスに対する防御機構として機能していることを示唆している。
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