本課題は、バイオインフォマティックスによるタンパク質構造、局在情報および質量分析装置を用いたプロテオミクスによるタンパク質の特性情報を用いることによって、従来とは異なる方法論を用いて新規薬物輸送担体を同定することを目的とする。本年度は、昨年度絞り込んだ候補タンパク質について発現ベクターを構築し、ほ乳類細胞に導入することによって安定発現細胞を構築した。さらに、30化合物についてLC-MS/MSの定量系を構築した。樹立した安定発現培養細胞及び化合物ライブラリを用いて候補分子に輸送される化合物の探索をおこなった結果、取り込まれる化合物の同定に成功した。取り込み実験によって、細胞内に取り込まれる化合物及び細胞から排出される可能性のある化合物を同定した。一つの化合物についてL体及びD体を用いて輸送解析を行ったところ、立体選択的に輸送されることが明らかとなった。また、この化合物の輸送に関する阻害効果を複数の化合物について検討し、複数の阻害剤を同定した。今後は、in vivoにおける機能及び局在解析を行うことによって、薬物動態にかかわる新たなトランスポーターとその機能が明らかになることが期待される。
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