アミロイドβ(1-40)は薬物による根治療法の確立されていない加齢黄斑変性症時に網膜色素上皮細胞への異常蓄積、緑内障患者における神経節細胞への毒性への関与が見いだされており、正常時の網膜において、アミロイドβが蓄積しないことから、血液網膜関門(BRB)に何らかのアミロイドβ(1-40)の排出輸送機構が備わっていると考えられる。そこで、BRBにおけるアミロイドβ(1-40)の排出輸送を担う分子を同定し、BRBを介した網膜から循環血液中へのアミロイドβ排出輸送機構を解明することを目的とした。In vitro内側BRB(inner BRB)モデル細胞として条件的不死化ラット網膜毛細血管内皮細胞株(TR-iBRB細胞)及び外側BRB(outer BRB)モデル細胞であるヒト網膜色素上皮細胞株(ARPE-19)細胞を用い、[^<125>I]アミロイドβ(1-40)の取り込み輸送解析を行った。TR-iBRB細胞およびARPE-19における[^<125>I]アミロイドβ(1-40)の取り込みは時間依存的に上昇し、TR-iBRB細胞において20分においてcell/medium比として10μL/mg proteinであり、ARPE-19細胞では、5分で8μL/mg proteinであった。 TR-iBRBにおける[^<125>I]アミロイドβ(1-40)の取り込みは、取り込み温度を37℃から4℃に低下させても取り込み量に変化は示されなかった。さらに、過剰量のアミロイドβ(1-40)(5μM)添加しても変化は示されなかった。一方、ARPE-19細胞における[^<125>I]アミロイドβ(1-40)の取り込みは、温度低下、過剰量のアミロイドβ(1-40)(5μM)添加に伴い低下することが示された。従って、ARPE-19細胞における[^<125>I]アミロイドβ(1-40)の取り込み輸送には、温度依存性および自己阻害効果が示され、担体介在型輸送が示唆された。網膜からのアミロイドβ(1-40)の排出輸送には、inner BRBよりもむしろouter BRBの関与している可能性が示された。
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