血液網膜関門を介したアミロイドβ排出の分子実体は加齢黄斑変性症などの疾患の治療ターゲットとなりうる。申請者は外側血液網膜関門の実体である網膜色素上皮細胞に[^<125>I]ヒトアミロイドβ(1-40)(hAβ(1-40))は一部担体介在型で取り込まれることを見出した。これまで肝臓などにおいてhAβ(1-40)の輸送を担うという報告のあるLRP-1を標的とし、western blotを行った結果、ヒト網膜色素上皮細胞のin vitroモデルであるARPE-19細胞のサンプルにおいて、目的の位置にバンドが検出された。従って、ARPE-19細胞ではLRP-1がhAβ(1-40)輸送に関与する可能性が考えられた。しかし、LRP-1に対する選択的な阻害剤が無いため、化合物共存下による阻害効果の検討は非常に困難であると判断された。そこで、ARPE-19細胞を用い、small interfering RNA(siRNA)導入法の確立を目的とし、In vitro内側血液網膜関門において遺伝子抑制効果が認められたSR-BI siRNAを用い、導入条件の検討を行った。なお、SR-BIのARPE-19細胞における発現を抗SR-BI抗体を用いたwestern blotによって、目的の位置にバンドが検出されたことから、ARPE-19細胞にはSR-BIタンパク質が発現することが示唆された。SR-BI siRNAの導入条件を検討した結果、25nM siRNAの6時間処理によって、ARPE-19細胞においてSR-BIタンパク質発現が十分に抑制されることを見出した。ARPE-19細胞におけるRNA interference法を確立したことから、今後本手法を用い、ヒト網膜色素上皮細胞におけるhAβ(1-40)輸送の分子機構、特にLRP-1の関与を明らかにする予定である。
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