研究課題
萌芽研究
我々は「脳の疾病には、軽微な脳形成不全(細胞配置異常)とそれを原因とする機能不全がある場合があり、それらの少なくとも一部は、大脳皮質形成時の細胞移動を検討することで明らかにできる」との仮説をたてた。本研究では、その仮説の実証を図ることを目的としている。その前段階として、遺伝子導入した神経細胞の機能を、簡便に解析できる方法があれば、大脳皮質細胞移動異常とそれによる脳機能やひいては疾患との関連をより明瞭に解明できると考えた。そこで、当該年度は、「光照射により大脳皮質内局所回路における神経伝播を可視化できる系の開発」を目的とし、実験系のセットアップを行った。Channelrhodopsin-2は単細胞生物由来のタンパクであり、光感受性のcation channel分子である。そのN端側の315アミノ酸は光の感受、チャンネル活性発現には十分であり、その遺伝子を導入すると、動物の培養海馬神経細胞では安定に発現したと報告されている。rhodopsinの性質を持つため、青い光刺激により、刺激後50μs以内に発火する(内向き電流が生じる)。すなわち、この分子を発現させた神経細胞を光刺激することで、ほぼ任意の頻度で細胞を発火させることができる。そこで、この遺伝子を、神経細胞のみに発現させるプロモーター特性の発現ベクターを用い、疾患に関わると想定される遺伝子に対するRNAiベクターと同時に大脳皮質脳室帯の神経細胞に導入する。そして、しかるべき日数の後、脳をとりだしスライスとし、遺伝子導入細胞を光刺激し、その刺激の結果生じる神経活動の様子を観察、検討する系の確立について実験を進めた。当該年度は、遺伝子導入法を確立することができた。さらに、時期特異的に働くRNAiの開発を進めた。同時に光刺激用機器の準備を進めた。
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