【背景】低酸素や虚血によって誘導される細胞死のメカニズムはいまだ十分に理解されていない。これまでに、低酸素/低グルコース刺激によって誘導される細胞死がアポトーシス実行因子であるCaspaseに依存しない非アポトーシス型細胞死であること、また、この細胞死がホスホリパーゼA2(PLA2)に依存することが報告されている。 【結果】低酸素/低グルコース刺激による細胞死からの細胞保護因子の検索に関して、申請者はレトロウイルスcDNA発現ライブラリー(マウス胚由来cDNAライブラリー)を増幅し、実験に用いるマウス神経芽細胞腫(Neuro2a)への感染効率の測定などの予備実験を行った。引き続き細胞保護因子のスクリーニングを行う。 また、細胞保護因子の検索に付随して、この刺激による細胞死の分子メカニズムについて解析を行い、以下のことを見出した。 1)様々なストレスによって活性化されることが知られているp38MAPKがこの刺激においても活性化される。 2)p38MAPK阻害剤やp38αのsiRNAによってこの細胞死が阻害される。 3)p38MAPK阻害剤がこの刺激によるPLA2の活性化を阻害する。 以上より、この刺激による細胞死において、p38MAPKがPLA2の上流で機能している可能性が示唆された。これらの結果からp38MAPK→PLA2というシグナルが低酸素/低グルコース刺激によるCaspase非依存性細胞死において重要な働きをしていると考えられる。現在、p38MAPKがリン酸化によってPLA2を制御しているかどうか、この刺激においてp38MAPK活性化の上流にどのような因子が働くのかについて解析を行っている。
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