研究課題
本年度は下肢虚血モデルにおけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の血管新生増強による虚血の回復につき検討した。ASOなどの患者において下肢虚血時に強い痛みを経験することは良く知られている。下肢虚血による痔痛は、主にC繊維を刺激することが原因と考えられる。そこで、神経ペプチドのひとつであるCGRPノックアウトマウスを用いて、常法にしたがい、下肢虚血モデルを作成し、虚血部位における血管新生に神経由来の内因性CGRPの作用を調べることにした。虚血処置をすると、直ちに虚血肢ではレーザードップラーで調べると、対側の無処置肢の血流の約10%まで減少し、その後約2-3週間にかけて血流が回復するのが確認できた。CGRPノックアウトマウスでは、その回復は有意に遅れ、3週間経って野生型のそれまで回復した。術後1週間の虚血肢のCD31免疫染色では、CD31陽性の虚血部筋肉中の毛細血管密度は、野生型のそれに比較してCGRPノックアウトマウスでは有意に低値を示した。虚血肢の支配部位の脊椎後根でのCGRP前駆蛋白質のproCGRPのmRNAレベルを調べると、虚血刺激によりmRNAレベルが増加し、CGRP遊離増大が虚血下肢で起きていることが示唆された。in vitroのHUVECを用いた培養系では、HUVECのCGRP受容体の発現も確認でき、CGRP投与によりHUVECにおける管腔形成の増強も認められた。これらのCGRPの虚血下肢の血管新生の増強は、血管新生因子VEGF、bFGF、TGFbを介したものと考えられ、これらのGF発現がCGRPシグナリングの下流に位置することが証明された。CGRP8-37の投与は、CGRPノックアウトマウスの成績をミミックすることが出来た。CGRP作動薬が虚血の回復に有効であることが示唆された。
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