研究課題
マウス背部皮下にマトリゲルを接種し、必要に応じてbFGFを混入させることで、肉芽組織の増殖を促し、線維化が進行するか否か検討を加えた。このモデルでは、2週間にわたって血管新生(肉芽組織内ヘモグロビン濃度、CD31発現量で評価)が進行した。その後、4週まで同程度のレベルを保ったあとで、8週目で急激に低下した。肉芽組織内のコラーゲン量を線維化の指標として測定すると、2週目までに急激に増加し以後高値を8週目まで示した。肉芽内には好中球はほとんど存在せず、主要細胞成分はMac-1陽性のマクロファージとMac-1/CD3 double negativeのfibroblast様細胞であった。後者の中にはCD34陽性の骨髄から動員されたfibrocyte様の細胞が多くを占め、骨髄機能が重要な血管新生、線維化の制御要因であることが推定された。PGE2の作用に加え、さらに血小板でのトロンボキサン(thromboxane)の役割を解析するために、マトリゲルモデルマウスにOKYO46(トロンボキサン合成酵素阻害薬)あるいはS-146(トロンボキサン受容体TP拮抗薬)を連日投与し、血管新生、線維化を評価した。肉芽組織を4%PFAで固定し、パラフィン抱埋し、組織切片標本を作成、線維芽細胞をVimentin抗体、S100抗体で免疫染色して同定すると、TPシグナリングが血管新生、線維化を増強していることが判明した。コラーゲン沈着量も同様にTPシグナリングが増強していることが判明した。同組織内のSDF-1およびVEGF-AをELISAで測定すると、TPシグナリングを阻害することにより、低下することが判明した。生体顕微鏡下で新生血管床に接着する血小板を調べると、TPシグナリングにより接着が増強していることが判明した。我々の既報に従いトロンボキサン合成酵素を過剰発現するfibroblastを作成し、ゲル局所に投与すると血管新生、線維化が増強することが判明した。(713字)
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