タンパク質をコードしていないRNA (ncRNA)が多数発見され、生体システムにおける重要性が明らかになりつつある。一方、これらのRNAは通常種々の修飾を受けているが、その意義は全く不明である。RNA修飾と自己免疫疾患との関連を明らかにするために、本年度は、RNA修飾因子の機能阻害と抗RNA抗体の作製を行い、以下の成果をあげた。 1.ゼブラフィッシュを用いたRNA修飾の阻害 ゼブラフィッシュを用いて修飾に働くタンパク質(フィブリラリン、ディスケリン)遺伝子のノックダウン(翻訳阻害)を行った。それぞれの修飾酵素のmRNAに対するモルフォリノアンチセンスオリゴを受精卵に注入し、顕微鏡下で初期発生を観擦した結果、脳構造の異常、浮腫の形成、血球形成の遅延、器官原基・色素細胞(黒色細胞・虹色細胞)の形成不全などの表現型が得られた。ノックダウン胚は約1週間で致死となることから、これらのRNA修飾酵素は個体発生に必須であることが明らかになった。また、ディスケリンのノックダウン胚では、ヘモグロビン染色による血球数の減少も勧擦されたことから、骨髄不全を主症状とする先天性角化不全症のモデルとして有効であると考えられる。 2.人工抗体ライブラリーからの抗RNA抗体の単離 ファージディスプレイ型の人工抗体ライブラリーからRNAを認識する抗体(抗RNA抗体)の単離を試みた。抗原としてrRNAの自己抗体認識部位を用いてスクリーニングを行った結果、有望なクローンを複数単離することに成功した。通常の動物を免役する方法でRNA抗体を得ることは難しいと考えられるため、本手法はRNA抗体を作製するための有効な手段となり得る。また、RNA抗体はRNAの機能解析のための強力なツールになることが期待される。
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