タンパク質をコードしていないRNA (ncRNA)が多数発見され、生体システムにおける重要性が明らかになりつつある。一方、これらのRNAは通常種々の修飾を受けているが、その意義は全く不明である。RNA修飾と自己免疫疾患との関連を明らかにするために、本年度は、SLE患者で自己抗原となるrRNAに対する人工抗体の作製を行うとともに、ゼブラフィッシュにおいてRNA修飾に働く核小体の低分子RNA(snoRNA)の機能を阻害し、生体におけるRNA修飾の役割を検討した。 1. 人工抗体ライブラリーを用いた抗RNA抗体の作製 ファージディスプレイ型の人工抗体ライブラリーから、28SrRNAの自己抗体結合部位を認識する抗体クローンを8種類単離した。得られた人工抗体のrRNAに対する特異性はELISA法にて確認した。抗体クローンの塩基配列を決定しデータベースを解析した結果、新規の抗体であることが明らかになった。 2. ゼブラフィッシュにおけるsnoRNAの機能阻害とRNA修飾 snoRNAは通常イントロンにコードされている。そこで、U22、U26、U44、U78の各snoRNAについて、ゼブラフィッシュにおいてこれらsnoRNAがコードされているイントロンのスプライシングを阻害した。その結果、ゼブラフィッシュ胚に共通した表現型として、発育遅滞、頭部の形成不全、色素沈着の遅れなどが観察された。また、いずれも約1週間で致死となった。一方、U26のノックダウン胚から抽出したrRNAを用いて修飾の状態を質量分析計で調べたところ、U26が標的とする部位の修飾が低減していた。これらの結果より、ゼブラフィッシュの初期発生においてRNA修飾が重要な役割を果たしていることが初めて明らかになった。
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