弾性線維は、伸び縮みする組織(動脈・肺・皮膚など)に多くあって、その弾性を担う細胞外線維である。特に動脈では、脈圧を吸収するために弾性線維は弾性板という構造を作り重量の半分を占めている。老化によって心疾患の予後悪化因子となる動脈中膜硬化がおこるが、その多くは弾性線維の劣化・断裂が原因である。高齢者の主要疾患である肺気腫も弾性線維の劣化・断裂が直接原因であると考えられてきているため、弾性線維の劣化予防と再生は高齢化社会における極めて重要な課題である。これまでにDANCEという分泌タンパクが弾性線維形成に必須であり、リコンビナントDANCEタンパクがヒト皮膚線維芽細胞の無血清培養において弾性線維再生能をもっていることを見出した。本研究では血清存在下でも効果を発揮しうる弾性線維再生因子を探索し、DANCEと組み合わせて弾性線維再生タンパクカクテルとすることを目的とした。本年度は、弾性線維と共局在することが報告されている細胞外マトリックス分子を順に遺伝子ノックダウンし、ノックダウンによって血清存在下のヒト線維芽細胞培養で弾性線維の形成ができなくなる分子を見出した。さらに、この分子のリコンビナントタンパクを293T細胞により発現・精製し、弾性線維再生活性があるかどうかを確認している。また、コラーゲンスポンジシートにヒト皮膚線維芽細胞を播種して培養し、これを巻いて層構造を作らせたときに弾性線維層ができるかどうかを検討した。
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