近年、ライフスタイルの欧米化に伴い、肥満症が大きな社会問題となっている。肥満症がこれほどまでに大きな社会問題になっている最大の要因は、肥満症が様々な病態を誘導・増悪させるからであると考えられる。しかし、肥満症が実際にどう言った疾患に、どの程度悪影響を及ぼすかについては、未解明な点が多い。 自己免疫疾患は、免疫応答が誤って自己の組織を攻撃する病気である。人口の5%が何らかの自己免疫疾患に罹患すると言われる程ありふれた病気であるが、その原因はあまりわかっていない。自己免疫疾患の発症には遺伝的素因に加え、環境要因が大きな影響を与えると知られている。これまでに、感染症、ストレス、薬物といった環境要因の関与が精力的に検討されてきたが、一部の疾患を除いて、明確な因果関係は認められていない。 そこで本研究計画では、肥満症、及び肥満症によるいわゆる生活習慣病が自己免疫疾患に与える影響、また反対に自己免疫反応が生活習慣病に与える影響を解明することを目的とする。 本年度は、C57BL/6-PD-1欠損マウスをdbマウス(C57BL/6-Leprdbマウス)と交配してC57BL/6-Leprdb-PD-1欠損マウスを作製したが、各々単独の変異を持つマウスに比べ、生存期間、肥満症の程度、自己免疫症状には大きな変化は認められなかった。次年度は、より長期間飼育することにより、より詳細に検討する予定である。 免疫応答、及び肥満随伴症状は、遺伝要因により大きく影響を受けることが知られている。そこで本研究計画では、C57BL/6系統に加え、BALB/c系統等で同様の解析を行う予定である。本年度は、C57BL/6-LeprdbマウスをBALB/c系統に4世代にわたって戻し交配を行った。今後、より純度を高めるために戻し交配を継続するとともに、4世代目の時点でホモ化を行い、予備的解析を行う予定である。
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