研究課題
萌芽研究
ヒト骨肉腫30例でER(エストロゲン受容体)alpha, ERbeta, PR(プロゲステロン受容体)、AR(ノアンドロゲン受容体)、アロマターゼを免疫組織化学的に検討した。ERbetaは24例、PRは26例、ARは9例で認められたが、ERalpha, アロマターゼは1例も認められなかった。ERbetaと細胞増殖のマーカーであるKi67/MIB1の標識率の間には正の有意な相関関係が認められた。この事はエストロゲン、プロゲステロンが実際の骨肉腫の細胞増殖に深く関与しておる事と、ヒト乳癌などとは異なり作用部位局所で生物学的活性の高い性ステロイドが合成して作用するintracrine機構ではなく、外部からのホルモンが作用するendocrine機構が働いている可能性を強く示唆した。そして骨肉腫におけるエストロゲン作用を更に解明する為にヒト由来骨肉腫細胞株MG63おけるエストロゲン作用を明らかにするため、近年、骨組織における作用が注目されているsteroid and xenobiotic receptor(SXR)との関連を検討した。MG63を用いてSXR標的遺伝子であるCYP3A4プロモーターのルシフェラーゼ(Luc)アッセイを行ったところ、estradiol及びestrogenic compoundであるbisphenolAはSXRリガンドであるRifampicin(RIF)と同様にLuc活性を有意に増加させた。また、MG63にbisphenol Aを添加することによって、骨芽細胞でのSXR標的遺伝子であるCYP3A4、TSKU及びMATN2の発現が増加することを定量的PCRにて確認した。TSKU及びMATN2は細胞外マトリクスとして、コラーゲンの蓄積に関与することが報告されている。以上、estrogen(estrogenic compoundを含む)は、SXRを介して骨肉腫の病態に関与することが示唆される。
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