研究課題
我々が作製した遺伝子改変マウス(nardilysin欠損マウス)は、思いがけず低体温を呈し、外気温を変えることで体温が変化する、"変温マウス"ともいうべきマウスであった(未発表)。哺乳動物は厳密な体温恒常性を保持しているため、体温が様々な疾患、侵襲において果たす役割の理解はこれまで限定的であった。もし簡単に1℃でも2℃でも体温を下げることが可能になれば、代謝を抑えることで様々な疾患の治療に用いることが可能だろうか?本研究では変温マウス(NRDc-/-)を用い、均一な遺伝背景を持つマウスの体温の差が、様々な侵襲に対する生体反応において、いかなる意味を持つかを検討することを目的とした。すなわち、NRDc-/-マウスを異なる外気温下におくことで、体温に1-1.5℃程度の差をつけ、その状態で同様の侵襲を加え、生じる生体反応を比較する。本申請研究期間(1年間)において、1)低体温実験システムの確立を第一の目的とし、更に2)創傷治癒、3)心筋の虚血および再灌流障害、4)細菌感染、などの侵襲を加え、それらに対する生体防御反応を、主に組織学的、分子生物学的に検討する予定としていた。ところが、この実験を行うために必要な温度調節可能なマウス飼育ケージの設置が、医学研究科動物実験施設の事情などにより大幅に遅れたため、現在漸く、温度設定変更とNRDc-/-マウスの体温の相関の検討を開始できた段階である。一方、同マウスにおける体温恒常性維持の分子メカニズムの解明は、極めて重要な課題であるが、NRDcが核内転写制御を介して、褐色脂肪組織の脱共役タンパク質による熱産生を制御していることが明らかになった。
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Exp Cell Res. 314
ページ: 939-949
Biochem. Biophs. Res. Conmun. 370
ページ: 154-158