本年は、4月と9月に開始した2回の培養実験を行った。4月からの培養は、6月に非ライ菌性の抗酸菌の発生により中断せざるを得なかった。これまでも屡々抗酸菌の発生が見られたので、この際これらの菌の詳細を検討した。発生する菌は2種に限定される。遺伝子解析の結果、一つはM.smegmatis他はM.avium complexに属する菌であることが明らかになった。その汚染源は明かではないが、培養源であるヌードマウス足蹠の皮膚に付着している、使用する卵黄抽出物作成時に汚染する、の2つが最有力であり、今後これらの無菌処理をより厳格に行うことで、汚染は避けられると考える。4月の培養で実施したもう一つの実験は、栄養のない培養液での増殖を見るコントロール実験である。リン酸緩衝液と、NK基礎培地(Kirchner培地とほぼ同じ)のみでの培養では、ほぼ100目間の培養期間中、菌数の増加を見ることはなかった。9月からの培養では、添加物として、これまでの牛胎児血清、卵黄抽出物、肝臓抽出物、M.phlei培養上清の他に、ピアロウロン酸を加え、更に培養温度を従来の30℃から33℃に上げて実施した。33℃でヒアロウロン酸添加の培養で120日後に約10倍の増殖を見た。これまで10倍以上の増殖を見た培養例は、12回の培養実験中で2例有り、それに共通しているのは、最初の接種菌量が少ないことである。これは、使用するマウス足蹠内での菌の増加が少ない事を意味する。これまでは、足蹠にライ菌を接種後10ヶ月のマウスを使用してきたが、この結果を踏まえ、来年度は菌の接種後より若い時期の足蹠(6〜8ヶ月)を使用することとした。恐らくこれにより試験管内での10倍以上の増加は可能性は高いと考えている。
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