本研究では、研究代表者が世界に先駆けて開発した、(i)単純ヘルペスウイルス(HSV:herpes simplex virus)感染細胞のリアルタイムイメージング技術、および、(ii)ウイルス特異酵素試験管内アッセイ系を応用し、既存の抗HSV薬とは異なる作用機序の薬剤スクリーニング系を開発することを目的とする。 本年度は、既に作製済みの、HSVの3つのコンポーネントを異なる蛍光蛋白質で標識した組み換えウイルス(YK608)を用いて、細胞を96マルチウエルプレートに捲き、YK608を感染させ、自動電動ステージ付きの共焦点レーザー顕微鏡で感染細胞における各ウイルスコンポーネントの局在変化を各ウエルごとに観察することが可能となった。つまり、多検体においてウイルス粒子成熟過程の解析が可能な系を確立した。これによって、ウイルス粒子成熟過程を標的とした新しい抗ウイルス剤のスクリーニングが可能となるものと考えられる。また、昨年度、得られた知見である、「HSV PK Us3の自己リン酸化は感染細胞におけるUs3 PK活性を制御している」に関しては、Us3の自己リン酸化がマウス動物モデルにおける病原性発現にも関与していることが明らかになった。抗ウイルス剤スクリーニングの標的であるUs3の自己リン酸化現象は、ウイルスの病原性発現を制御していることが示唆され、新しい抗ウイルス剤開発に寄与するものと考えられた。また、昨年作製したUs3の自己リン酸化を特異的に認識するリン酸化単クローン抗体が酵素抗体法に供することができることが明らかになり、Us3活性化を標的とした新しい抗ウイルス薬のスクリーニングが可能となると考えられた。
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